他の診療科目の場合、病気やけがの症状が快方に向かえば、自分の看護活動も寄与しているなという実感がわくでしょう。しかし精神科の場合、なかなか症状の改善がはっきりわかりません。一見するとここ最近どんどん表情が明るくなって、症状が改善しているとみられる患者でも翌日には元の深刻な病気の状態に逆戻りしてしまうケースも珍しくありません。せっかく良くなっているような感じがしても、また元に戻ってしまうと「自分の看護は果たして必要なのか?」と疑問に感じてしまいます。自分がいくら一生懸命看護業務をこなしていても、なかなか反映されないとむなしさを感じて、仕事に対するモチベーションが低下してしまいます。
高齢化社会がどんどん進んでいて、精神科の中には認知症を患っている患者の数も増えてきています。認知症の場合、症状の進行を食い止めるとか遅らせるのは可能ですが、現代医学の力をもってしても、認知症を完治させるのは困難です。このような認知症の患者の担当を長く続けている人の中には、精神科看護師をやめたいと思う人も出てくるようです。介護疲れがメディアなどでも取り上げられていますが、それに似たような心理状態に陥ってしまいます。ゴールのない中で看護活動を長く続けていると、自分が何のために患者のケアをしているのかわからなくなります。口コミサイトや掲示板の意見の中でも、看護計画を作成するときに永遠とほとんど同じようなことの書かれているコメントを見るのに嫌気がさしてしまったという精神科看護師の人もいるようです。
しかも他の診療科目の同業者からは、自分の頑張りを正当に評価してもらえない傾向もあります。救急患者が運び込まれることも少ない、容体の急変も少ないということで「精神科看護師は楽でいいよね」といったことを言われる人も多いです。そうなると普段自分が仕事をしている意味が分からなくなってしまって、ますますやめたいという気持ちになってしまうようです。精神科看護師になるのであれば、自分を見失うことのないようになぜ精神科で仕事をしたいのか、しっかりと意識する習慣を持つべきです。